自粛期間も約3か月となり疲れを感じておられる方も多いのではないでしょうか?そうかと思えば、前回コラムの猪田さんのように、そんな暇もなく新メニュー開発をしたり、新規ビジネスを練っている方も、この企友会には多いかもしれません。おそらくこれほど多くの自宅時間を持てることは、リタイヤするまでないだろうと考えると、ボーっとしてチコちゃんに叱られないよう、とにかく今できる、『考える』ことが一番ではないでしょうか。

今回のパンデミックの状況が辛いのは、世界中の誰もが感染の危険があるということです。マズローの5段階欲求説では、5段階ピラミッドで象徴される人間の欲求は、低階層の欲求が満たされなければ、より高異次元の欲求を欲することはできないとされています。今回下から2番目の、健康で安全な最低限の暮らしを確保したいという「安全欲求」が脅かされ、同時に、その上の階層の社会に帰属したり仲間が欲しいという「社会的欲求」が同時に大きく侵害されています。失業したり収入がなくなったりすることで、もしかすると最下層の食べる・寝るという、生きていくため最も基本的な「生理的欲求」もままならない危機感があるとすると、更にことは深刻です。いずれにしてもそのような状況で、上層に位置する「尊厳欲求」「自己実現欲求」を満たすことは到底無理で、これほどの危機的状況は戦後初と云われています。 このことは思考の悪循環を生み、社会的活動、人との繋がりの欠如(孤独) → 心配事・不安・悩み(お金、仕事、人間関係) → 精神的な落ち込み → ストレス と無意識レベルのストレスを生む原因となっています。

不安な気持ちはそう簡単に拭えるものではなく、更に悪いことに、よりネガティブな情報を選び取ります。例えば、「ウイルスは高温多湿、紫外線に弱いので夏場になれば収束する」というポジティブな情報に対して、それは実験室でのデータであって、実際の調査では証明できない、というネガティブな情報の方を信じようとします。そしてそんな情報ばかりを見ていると、さらに偏った情報ばかりが目に付くようになります。実は私も一時期、コロナ発生の陰謀説をいろいろと見ていたのですが、いつの間にかそんな偏った情報ばかりが集まってきてしまうようになりました。これは情報デジタル社会の怖さでもあります。

せっかく『考える』時間が豊富にあるなら、ポジティブな感情でありたいものです。物事には常に二面性があります。一つの事象を明るい面から捉えるか、暗い影の面から捉えるかによって気持ちや行動も変わってきます。今世界で起こっているパンデミックの状況下で、それをどう前向きに捉えればよいのでしょうか?

皮肉なことに都市のロックダウンなど経済活動の停止によって、地球の空気や水がきれいになっていることが報告されています。WHOによると世界で環境汚染による死者数は少なくとも700万人と言われてますが、その数を減らせるかもしれません。世界中の英知を集めて取り組んできた地球温暖化対策も、リモートワークによって人の移動を劇的に減らすことができれば、新たな解決の糸口が見つかるかもしれません。

私の仕事のテーマは、「健康でエコな住環境」ですが、今まさにそれが求められています。今の時代、免疫力を低下させる要因が我々の周りにはたくさん存在します。化学物質や電磁波ストレスのない住まいで、健康な水、きれいな空気、快適な温熱環境を提供できれば、免疫力アップにもつながるはずです。日本にはそれら技術で誇れるものが多くあります。そして日本のきれい好き文化、抗菌技術などはこれからのwith Corona時代には必要不可欠で、同時に発酵食品など日本の食文化もこれから世界に求められることでしょう。

私はカナダ在住33年となりますが、今回のことでカナダ政府を見直した点が多々あり、移民として住まわせてもらっていることにあらためて感謝することもできました。そして何よりも、自分たちは社会的な人と人のつながりによって生かされていると、再認識することができました。この困難で世界が一つになることができれば、コロナも悪いことばかりではなかったと、将来思えるときが来るのかもしれませんが、残念ながらそれはまだ先のことのようです。 でも諦めずに自分に何ができるか考え続けたいと思います。 “Hope for the best while preparing for the worst.”

吉武政治